ライター 長井の気ままな生活

気ままなライター生活を綴ります

60歳から始める個人事業主~中小企業の事業継承問題

私はこの問題について、あまり国は口をはさまなくていいと考えているのです。実は、中小企業の社長は多かれ少なかれ、雇われたくないという思いでビジネスを行なったもので、誰に事業継承するかを考えていなかった例が多いのです。

たまたま、儲かっていれば自分の息子が継ぐでしょう。それがベストなのですが少しの黒字は出ていても、継ぐ旨味が少ない際は、息子や娘婿は公務員かサラリーマンをしている例があり、ここが事業継承で一番の問題をはらんでいます。

会社で利益を出すスキルと事業継承のそれとはまったく違います。また、技術的にそこそこ優れていてもそれが属人的であり、継承できなければなんの意味も持ちません。

亡父の個人事業は仕事は誰でも出来るのですが、仕事を取る手法は人間関係で属人的でした。実際、この人間関係は私にもよく分かりませんでした。

そしてさらにやっかいなことに経営者だけが高齢化しているのではなく、従業員みんな高齢化している会社が多く、国は頑張って事業継承させようと思って、最近では経済産業省外資を呼び込んで日本の中小・零細企業買いませんかと誘っています。

でも、会社全体が老人の会社って魅力がないんです。それに高齢者ばかりの会社って継続的に利益確保が出来るか疑問です。

ネットを見ると、中小・零細企業の独特の技術を外国に売る気かと反発する声もありますが、まったくそうした懸念はありません。本当に優秀な技術であれば、大企業が株を買い取って子会社化しています。

今、売りに出されている中小・零細企業は本当に微妙な会社が多いのです。ただ黒字の会社もそれなりに多いので潰すには惜しいと感じます。雇用を考えると売れればいいのですが、中小・零細企業の経営は簡単ではないです。

この事業継承問題を考えるとやはり経営者が悪いです。本当は、自分の次は誰かということを考えることも本来、経営者の仕事だったのにそれを完全に放棄していたのです。

よく、大企業ドラマで、老いた社長が専務か副社長あたりに、「僕の次は君だよ」と指名するシーンがありますが、中小企業にはそういうのはないです。

本当は指名して、社長になる心構えなどを教えた方がいいです。

そして経営者が突然死した時、同様に会社も死ぬのです。ただ、この場合は、いわゆる倒産ではなく、休廃業・解散です。その後始末は残された総務系の社員が行ないます。

これは「しんがり」と呼ばれる仕事ですが、この仕事は完全に貧乏くじです。味方を全員逃がすために、自分がその会社に留まって敗戦処理を行なうものです。

羽柴秀吉も「金ヶ崎の戦い」でしんがりをつとめましたが、この「しんがり」は現代でも生きているのです。

ちなみに、父の個人事業の後始末は私と妻が行ないました。個人情報にからむ書類が多かったので、大量の紙をシュッレッターにかけました。だいたいしんがりの仕事は中小同族会社の場合、身内がつとめるのです。

今、倒産はもっとも少ない時代に突入していますが、休廃業・解散は高止まりです。これから老いた代表が多いのでさらに休廃業・解散は続きます。

中小企業の1/3が代表が高齢化し、後継者が決まっていないのは127万社です。これから恐ろしい数の中小企業が廃業することになるでしょう。

異論はあるかもしれませんが、私は休廃業・解散をどんどん進めて古い体制の企業は市場から退場してもらった方がいいという考えです。古い体制の企業は歴史的使命を終わったのです。一方、新たに起業してもらう若者が増えてくれた方が市場の新陳代謝が図れるという考えなのです。

私も父の個人事業を継がず、父に廃業してもらって自分が個人事業を立ち上げました。世の中そういう風に回っていくのが一番いいと思うのです。