続「ノストラダムス大予言」五島勉さんの思い出
五島勉さんがインタビューで自身の回顧を行なっています。私も再度取り上げたのは、やはり自分も五島さんの本に影響されたことが多かったからです。
このインタビューはすべて読みましたが面白いです。とても88歳とは思えない受け答えです。
「ノストラダムスの大予言」は今思えば不思議なのですが、オトナから小学生にも読める本でした。結構内容はそこそこ難しいハズなのに読みやすく面白い。
スリラー的な筆力はそれだけ素晴らしいものであったのでしょう。
あの当時、1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくるという予言は、現実的には核兵器であり、冷戦時代、恐怖の大王とはソ連であるだろうと想像していました。
当時、この本に影響されて勉強しなかったり、ニートになった方、さまざまいますが、五島さんが取り上げなくても誰かが終末本を執筆して、やはりベストセラーになっていたと考えます。
高校時代の授業中に、ある学生が突然、冗談めいて、
「勉強なんてしてもムダだ。どうせ世界は1999年に滅亡するんだ」と叫んだ子がいました。本気ではないですが、そこまで終末論が蔓延していたのです。
いろいろなオカルト本が流行っていた時代です。コックリさん、口裂け女、守護霊、超能力、UFO、サンカ、人類滅亡そういうマユツバものが大好きだったですね。
一時的にせよ、そういうマユツバものにトキメキとワクワク感を与えてくれたことには、若干感謝しています。
もし、そういうフィクションでありつつも、スリラー的に語る方がいなければ、若い頃はもっとつまらない人生になっていたのでしょう。
こうしたスリラーなフィクションから卒業したのは高校時代です。
これは自身がリアリズムになったことや好みが人文系の勉強の方が面白いと思い、受験勉強を始めたのです。
大学に入学して、オカルトは昔からあるものでそれを信じる方がいていつの時代でも変わらないという感想を持ちました。
今でも「江戸しぐさ」や「水からの伝言」など科学や歴史の皮を被ったオカルトが堂々とまかり通っている姿を見ると、「大予言」流行時代とそれほど進歩していないとも考えています。
そして五島さんの当時の思いを忖度しますが、作家やライターは「売れてなんぼ」の世界ですから、ベストセラーになった頃は、得意満面で編集者からも、「是非続編をよろしく」と依頼されていたことでしょう。
ただ、怖いのは筆力のある作家やライターは売れることを考えて機械的に執筆しますから、世の中に対する悪影響ということをあまり考えないのです。
編集者と一緒になって作家も、当時「売れた売れた!!」と大喜びしていた姿が目に浮かぶようです。作家やライターはことのほか無邪気なのです。
実は、私もニュースランキングに入ると影響力はともかくとして無邪気に喜びます。
五島さんの本には自身の創作がかなり入っていてそれが本当に面白いのです。
「講釈師見てきたようなウソをつく」
というコトワザがありますが、少なくとも講釈師としても一流だと思います。
たとえばノストラダムスと後に妻となる方ののはじめての出会いや学校の試験でノストラダムスが問題を提出される前に、ペラペラと答えるくだりは五島さんの完全な創作なのですが、本当に面白かったです。
問題は、五島さんが大予言を信じていたかどうかなのですが、これも怪しいです。
五島さんから見れば、需要に応えて次々と予言本も書いたのですが、これは鉱脈を発見したため、編集者から求められるまま執筆していたと想像しています。
ただ、私自身にも自重しなければいけないのは、売れればなんでも書くという姿勢はやはりよろしくないことです。
鏡として自重すべき所は自重しなければならないと思っています。
オカルトスリラー作家の五島さんを評価しつつも、世間に明らかに悪影響を及ぼすライティングについては慎重にならなければならないというのが五島さんから得られた教訓です。